クリーンルーム・テック・トーク エピソード 1:真空とは?主な真空ポンプの種類を開設
「クリーンルーム・テック・トーク」シリーズ第1回目の記事へようこそ!私はクリス・マクナリーです。このシリーズでは、クリーンルームや真空チャンバーにおける真空技術の基礎をわかりやすく解説していきます。第1回となる本エピソードでは、真空とは何か、その測定方法、そして真空を生成するために用いられるさまざまなポンプや技術について、基礎からご紹介します。
真空とは?
最も基本的な意味での真空とは、空気分子などの「物質」が取り除かれた空間のことを示します。私たちは地球上で常に大気中の分子に囲まれて生活していますが、ある一定の空間からそれらの分子を取り除くことで真空が生まれます。
しかし、分子が全く存在しない完全な真空は 、地球上では実現できません。現在地球上で到達可能なレベルとして最も近いのは1平方センチメートルあたり約 30,000個の分子 が存在する状態です。一見すると多く感じられるかもしれませんが、大気圧と比較すると、これはほとんど無視できるほどの量です。
セミコンダクタチャンバーソリューション部門では、チャンバー内部に制御された真空環境を作り出すことを目指しています。チャンバー内のガス分子はランダムに動き回り、壁面に衝突することで力を及ぼします。この分子の衝突によって生じる力を測定することで圧力を算出していますが、これはすなわち真空レベルを測定することと同じ意味を持ちます。
真空圧力はどのように測定されるのか
真空圧力はさまざまな単位で測定することができます。本記事では、トル(Torr)を用いて説明します。
760 Torr = 海抜ゼロ(海面)における地球の大気圧。
10−⁷ から 10−⁸ Torr = 典型的な半導体チャンバー内力。
これをわかりやすくいいかえると、半導体チャンバー内の圧力は、国際宇宙ステーションが周回している熱圏サーモスフィアの環境に近いレベルです。
真空ポンプの 2 つの主なタイプ
真空を生成するために、当社では 2 つのカテゴリーに分類される真空ポンプを使用しています。
移送ポンプ - 分子を物理的にチャンバーの外から移動させるポンプです。
速度型ポンプ:分子に運動エネルギー与えて移動させます(例:ターボ分子ポンプ、拡散ポンプなど)。
容積移送式ポンプ:分子を捕捉し、圧縮して排気します。
トラップポンプ - 分子をシステム内部に捕捉・保持するタイプのポンプです。
クライオポンプ:極低温の表面を使用して、分子を凍結・捕捉します。
スパッターイオンポンプ:プラズマと磁場を利用し、分子を材料として捕捉します。
チャンバー内トラップ:チャンバ内部の低温表面(例:エドワーズCTI-Cryogenicsの冷凍機、Polycoldクライオチラー)を用いて、分子を直接捕捉します。
これらの異なるポンプは、真空プロセスにおいてそれぞれ異なる目標圧力を実現します。その条件は、顧客、セグメント、市場によって異なります。
目標圧力:粘性流と分子流
真空チャンバー内における分子の挙動は、残っている分子の数によって異なります。
粘性流ー
ニューヨーク市のグランド・セントラル・ステーションに、ラッシュアワーの時間帯にいるところを想像してみてください。周囲には数えきれないほどの多くの人が行き交っています。駅構内の反対側に向かってできるだけ早く進もうとすると、途中で多くの人とぶつかったり、進路を妨げられたりするでしょう。
これが粘性流の状態です。この領域では、ガス分子はチャンバーの壁よりも、分子同士でより頻繁に衝突します。
分子流
今度は同じ場所を深夜 3 時に歩く場面を想像してみてください。駅構内はほとんど人がいない静かな状態です。このような環境では、他人に邪魔されることなく、自由に歩き回ることができ案す。これが分子流の状態です。この領域では、分子同士の衝突よりも、分子がチャンバー壁面に衝突する可能性の方が高くなります。その結果、分子は壁にあたりながら、チャンバー内をランダムに移動し続けます。
粘性流と分子流の両方の領域で効率的に動作できる単一のポンプは存在しないため、スタックポンプシステムを使用します。
まず、粗引きポンプとも呼ばれるプライマリポンプまたはバックポンプによって、システムは大気から約 10−³ Torr(粘性流量)まで下げます。その後、高真空ポンプが動作を引き継ぎ、チャンバーを分子流へ移行させ、プロセスに必要なベース圧力を達成します。
速度ポンプとは?
速度ポンプは、分子に運動エネルギーを与えることでイ一方向の流れを生み出す、移送ポンプの一種です。ここでは、代表的な 2 種類の速度ポンプを紹介します。
ターボ分子ポンプ:最大で時速約1000㎞(670マイル)にも達する非常に高速で回転するタービンを用います。回転によって分子の一部がポンプ内部へと下方に弾き飛ばされ、さらに連続的かつ方向性のある衝突を繰り返しながら、最終的にシステム外へ排出されます。
拡散ポンプ:高速のオイルジェットを使用します。分子は噴射されたオイル流によって下方へ引き込まれ、オイルプールへ引き込まれた後に排気されます。
トラップポンプとは?
移送ポンプとは異なり、トラップポンプは分子を外部に排出するのではなく、システム内部に捕捉・保持します。
クライオポンプ:低温の表面を使用して分子を捕捉し、真空を生成します。捕捉された分子はポンプ内部に保持され、容量が満たされると凍結した分子が解凍され、システムから排出されます。
スパッターイオンポンプ:プラズマと磁場を使用して分子を捕捉します。磁場の中で制御されたプラズマにより分子がイオン化され、生成された正イオンはカソードに引き寄せられてスパッタリングを起こし、材料に変化します。このように分子を物質化して捕捉することで、真空を生成します。
チャンバートラップ:厳密には真空ポンプではなく、真空生成のための技術です。真空チャンバー内部に直接トラップを設置して分子を捕捉します。代表例としては、エドワーズ CTI-Cryogenicsに代表されるギフォード・マクホマン冷凍機やPolycoldクライオチラーがあります。これらのシステムは、低温表面をチャンバー内に挿入し、コンダクタンス損失の影響を受けず、チャンバーの外側に接続されたポンプよりも効率的に分子を捕捉できます。
Edwards CTI-Cryogenics コールドトラップ:(ギフォード・マクホマン冷凍機)を基盤とし、水蒸気やキセノンなどのガスを捕捉できる極低温の表面を提供します。
Polycold クライオチラー:密閉型のクローズドループ冷凍システムを採用したクライオチラーで、冷却コイルを用いて水分子を捕捉します。CTI-Cryogenicsのコールドトラップほどの極低温には達しませんが、非常に高い水蒸気排気速度が求められる用途においてたかい効果を発揮します。
お客様にとっての要点
真空とは、チャンバー内部の分子を除去することで圧力を低下させる技術です。必要とされる圧力、すなわち真空レベルは、適用されるプロセスによって異なります。
真空ポンプにはそれぞれ異なる役割があり、1 台のポンプですべてを担うことはできません。そのため、 真空ポンプを段階的に組み合わせて使用します。プライマリポンプによって、圧力を粘性流領域まで下げ、その後、専用の高真空ポンプが分子流領域まで排気します。
これで、「クリーンルーム・テック・トーク」の最初のエピソードが終わります。次回は、さまざまな真空技術とそれぞれのポンプがどのように特定のクリーンルーム用途を支えているのかについて詳しく解説していきます。